昨今、企業が保有するデータ量は年々増加しており、多くの企業が自社のデータを基に有効な戦略を立案・実行しています。それでは、経営者がデータ活用を自らリードしたい場合、具体的にどのような点を意識すれば良いのでしょうか?
本記事では、データ活用の重要性やメリットなどに加えて、経営者がデータ活用をリードするために必要な意識・役割をご説明します。データ戦略の立案から実行までの進め方についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
データ活用が求められる背景とメリット
昨今、情報技術は加速度的に成長を続けており、AIやIoTなどの新しい技術が次々と登場しています。そして、これらの登場により、世の中に存在するデータの量は大幅に増加し、その種類も多様化しています。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大をはじめとした社会情勢の変化により、ビジネス市場も日々変わり続けています。人々の購買活動はリアル店舗からインターネット上にシフトし、消費者ニーズも高度化かつ多様化しました。
企業がこれらの変化に柔軟に対応するためには、客観的なデータに基づいた意思決定が必要になります。このような背景から、昨今ではデータ活用が注目を集めており、多くの企業がデータの有効活用に向けて試行錯誤を繰り返しています。
そして、データ活用は企業に多くのメリットをもたらします。例えば、膨大なデータを分析すれば自社の課題発見に繋がり、改善アクションを検討・実行することで生産性向上を実現できます。
また、顧客の購買データや Web の行動履歴データなどを分析することで、顧客属性ごとの傾向を把握でき、客観的なデータに基づいた効率的なマーケティング活動が可能になります。
このように、データ活用によって企業は様々なメリットを享受できます。変化の激しい現代において、データ活用は競合優位性を確立するための重要な鍵を握っていると言えるでしょう。
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経営者がデータ活用をリードするために必要な意識と役割
経営者がデータ活用をリードするためには「データは意思決定において重要な役割を担う要素である」という意識を強く持ち、経営者自身が積極的にデータ活用を推進する必要があります。
つまり、人間の感情・経験だけではなく、データに基づく客観的な情報を活用する意識を持って、データ駆動型ビジネスの実現を目指すことが重要なポイントです。
また、経営者がデータ活用をリードするために担うべき役割としては、
- ビジョンの明確化
- データ文化の醸成
- データのビジネスへの活用
- トレンドやテクノロジーの把握
などが挙げられます。
経営者がデータ活用をリードするためには、データ活用による目標やビジョンを明確にし、組織全体がデータを有効活用するための方向性を示すことが重要です。また、データ活用を組織文化の一部として浸透させるために、データに基づく意思決定を奨励し、データを共有し、学び合う環境を作ることも経営者に求められる重要な役割です。
さらに、経営者はデータを単なる情報として捉えるのではなく、ビジネスの成果や収益に繋げるためにデータをどのように活用するのか?を検討しなければいけません。加えて、データ活用に関連する最新のトレンドやテクノロジーを把握し、組織の競争力を高めるためのツールなどを積極的に導入することも大切です。
経営者がこれらの意識・役割を持つことで、自社のデータ活用を成功に導き、組織の成長と競争力を向上させることができます。
データ戦略の立案から実行までの進め方 6Step
本章では、データ戦略の立案から実行までの進め方を具体的な 6Step で解説します。データ戦略の立案・実行に取り組む場合、多くのケースで進め方は共通しているため、自社がアクションを進める上での参考にしてください。
Step.1 現状の把握
効率的なデータ戦略を実現するためには、自社の現状を正しく把握する必要があります。現在地の状況がわからない状態では、いくらデータを活用してもビジネス価値を生み出すことは困難です。
自社の強み・弱みを把握することはもちろん、どのようなデータを保有しているのか?についても具体的に見える化してください。経営者は広い視点で物事を見ることが多いですが、自社が導入しているシステム一覧など細かい部分まで理解することで、以降の作業をスムーズに行うことができます。
そのため、経営者の視点だけではなく、中間管理職や現場の作業者など多くのメンバーに対して積極的にヒアリングを行い、様々な目線から現状把握を進めてください。
Step.2 目的の明確化
現状把握が終わったら、次はデータ戦略の目的を明確化します。データ戦略はそれ自体が目的ではなく、最終的なゴールに到達するための手段に過ぎません。
わかりやすい例としては、コスト削減や生産性向上、マーケティング活動の最適化などが挙げられます。目的によって取り扱うデータの種類は異なるため、時間をかけて慎重に目的 を検討し、具体的な目標に落とし込んでください。
なお、この時の重要なポイントは経営者がリーダーシップを発揮することです。決めた目的を達成するために何故データ戦略が必要なのか?を経営者自身が考えて、全社員に説明して理解を得ることで、社員がデータ戦略に対して前向きに取り組むようになり、結果としてゴール達成までのリードタイムを短縮できます。
Step.3 データの整理
目的を明確化した後は、自社が保有するデータを整理します。なぜなら、データが綺麗に整理された状態でないと、効率的な分析作業を行うことが難しいためです。
仮に、複数のシステムにデータが点在している場合は、それらを集めて一元的に管理してください。データ整理は以降のプロセスに大きな影響を与えるため、焦らず丁寧に作業を行うことが重要なポイントになります。
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Step.4 データの分析
データを整理した後は、それらのデータを分析します。同じデータだとしても、少し見方を変えるだけで新しい発見があるため、自社のデータを多角的にチェックし、コスト削減や生産性向上に繋がる重要な洞察を得ることが大切です。
そのため、経営者の目線だけでデータ分析を行うのではなく、複数人が協力しながらプロジェクトを推進し、多くの観点からデータを分析することをおすすめします。ただし、膨大なデータを分析するためには豊富な IT スキルや知識が必要になるため、優秀な IT 人材を確保しておくことも重要なポイントになります。
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Step.5 データの可視化
データ分析が完了したら、それらのデータをわかりやすく可視化してください。この時、グラフや表などを用いて、人間がわかりやすいように工夫することが重要なポイントになります。
データから有益な洞察を抽出するためには、データの特徴や傾向を見抜くことが必須であり、そのためにはデータがわかりやすい状態に可視化されている必要があります。データの可視化はビジネス価値を生み出すための重要なプロセスなので、時間をかけて根気よく作業してください。
Step.3 から Step.5 までの一連のプロセスについては、ITツールの導入により大幅な効率化を図ることが可能です。データ活用のプロジェクトを円滑に進めたい場合は、ITツール導入を前向きに検討すると良いでしょう。
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Step.6 施策の立案・実行
最後に、可視化されたデータを基に具体的な施策を立案します。設定した目的から逆算して、必要なアクションを検討・実行してください。
この時、アクションの内容を検討するだけではなく、「誰がいつまでにアクションを実行するのか?」という細かい部分まで決めることをおすすめします。これにより、計画的に作業を進めることが可能になり、スピード感を持ってアクションを推進することができます。
データ戦略を成功させるためのポイント
データ戦略を成功させるためには、いくつか重要なポイントを意識する必要があります。自社のデータ戦略を成功に導くためにも、ぜひ内容を理解しておきましょう。
適切なKPIを設定する
データ戦略を成功させるためには適切なKPI設定が必要不可欠です。KPIは「Key Performance Indicator(意味:重要業績評価指標)」の略であり、主に業務のパフォーマンスを計測するために使われる指標です。
KPIを設定することで、目的達成までのプロセスにおけるアクションの達成度合いや進捗状況を把握できます。これにより、現状に合わせた対策を講じることができるため、結果として自社の生産性向上に繋がり、データ戦略を成功に導くことが可能になります。
データドリブンな意思決定を行う
データドリブンとは、データに基づいて判断・実行することを意味する言葉です。そして、データ戦略は客観的なデータを基に具体的な戦略・アクションを検討することが大前提となる取り組みです。
そのため、意思決定を行う場面では、必ずデータに基づいた判断を行うように意識してください。人間による主観的な判断はヒューマンエラーなどのリスクが伴いますが、データドリブンな意思決定を実現することで、リスクを排除しつつ迅速な判断が可能になります。
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継続的にPDCAサイクルを回す
データ戦略の重要なポイントとして、継続的なPDCAサイクルを回すことが挙げられます。データ戦略は一過性のものではなく、継続して繰り返し実践することで精度を高めることができる取り組みです。
そのため、一度データ戦略を立案・実行したからと言って安心せず、定期的にデータを見直してPDCAサイクルを回すことが大切です。これにより、データ活用の効果を高めることが可能になり、データ戦略を成功に導くことができます。
データ戦略が成功した事例
最後に、データ戦略が成功した事例についてご紹介します。実際に多くの企業がデータ戦略を立案・実行して成功をおさめているため、自社でデータ戦略に取り組む際の参考としてご覧ください。
ヤクルト
ヤクルトでは、膨大なデータを収集・分析することで 15% 以上の売上増を実現しました。
利用したデータの種類としては、
- 購買データ
- 気象データ
- Web の検索データ
- 広告の閲覧データ
などが挙げられます。
これらを総合的に分析した結果、夏季キャンペーンの失敗要因は広告訴求力や気温ではなく、購買ターゲットの多くが旅行に出掛けていたことが影響しているという結論が出ました。
このように、様々なデータを組み合わせて効果的なデータ戦略を実現することで、自社の課題特定やマーケティング活動の効率化に繋がった好事例だといえるでしょう。
岡山大学
岡山大学は長野県高森町と連携し、子どもの学習意欲に関するデータ検証を行なっています。具体的な取り組み内容としては、 e-Learning システムを導入して学習の内容ごとにアンケートを取得することで、自主学習の態度と成績の相関関係を分析しています。
これにより、学習意欲が低下している生徒を可視化でき、その生徒に対しては教師や親が適切なフィードバックを行う仕組みを構築しました。その結果、フィードバックの回数に応じて、生徒の学習意欲や成績が向上し、データ戦略を教育現場に上手く活用した好事例となっています。
エクスペディア
エクスペディアでは、スマートフォンに搭載されているGPS機能を活用したデータ戦略を展開しています。従来、旅行業界は海外旅行者の情報を取得できないことが課題となっていましたが、同社は様々なデータを日本の宿泊施設に提供することで上記の課題を解決しています。
提供しているデータの種類としては、旅行者の居住地や客室単価などが挙げられます。予約管理システムを通してこれらのデータを取得し、日本の宿泊施設がデータベースにアクセスすると、各種データを確認できる仕組みになっています。
これにより、日本の宿泊施設は国内にいながら海外旅行者の動きを把握することができ、効果的なキャンペーンの検討や競合優位性などに繋げることが可能になりました。
まとめ
本記事では、経営者がデータ活用をリードするために必要な意識・役割に加えて、データ戦略の立案から実行までの具体的な進め方について解説しました。
経営者がデータ活用をリードするためには、経営者自身が意思決定におけるデータの重要性を強く意識するとともに、ビジョンの明確化やデータ文化の醸成などの重要な役割を確実に務めることが求められます。
一般的に、データ戦略の立案から実行までのプロセスは決まった流れが存在するため、データ戦略を成功させるためのポイントを意識しながら、一連のステップを順番に進めていくことが大切です。
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