昨今、デジタルトランスフォーメーション( DX )の重要性が強く叫ばれており、企業は膨大なデータを収集・管理し、ビジネスへ有効活用することが求められています。しかし、データ活用の重要性は理解していながらも、上手く実践できずに苦労している方も多いのではないでしょうか?
そもそもデータを活用するまでには、様々な工程があります。
- 目的から逆算をして収集するデータを決める
- 収集したデータを分析できる状態へ加工する
- 加工したデータを分析
- 分析したデータを基に意思決定をする
など。
以上のようにデータを活用するまでの全体像が見えていないというのも失敗の原因であることもしばしばです。
本記事では、データ活用の基礎的な内容に加えて、データ活用の主な失敗原因や具体的な失敗例まで一挙に解説します。データ活用を成功させるためのポイントにも触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
データ活用の重要性
まずは、データ活用の重要性について考えてみましょう。
従来の日本企業においては、熟練者の勘や経験に頼った意思決定が一般的でした。しかし、デジタル技術が広く普及した現代においては、客観的なデータに基づいた判断が求められます。
昨今、情報技術は加速度的に成長を続けており、 AI や IoT などの新しい技術が次々と登場しています。そして、これらの登場により、世の中に存在するデータの量は大幅に増加し、その種類も多様化しています。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大をはじめとした社会情勢の変化により、ビジネス市場も日々変わり続けています。人々の購買活動はリアル店舗からインターネット上にシフトし、消費者ニーズも高度化かつ多様化しました。
企業がこれらの変化に柔軟に対応するためには、客観的なデータに基づいた意思決定が必要になります。このような背景から、昨今ではデータ活用が注目を集めており、多くの企業がデータの有効活用に向けて試行錯誤を繰り返しています。
データ活用の失敗例
本章では、実在する企業を例に挙げながら、データ活用の失敗例を詳しくご紹介します。
通信販売メーカー
とある通信販売メーカーでは、 100 万人以上の自社顧客に対して 1 to 1 マーケティング(一人ひとりの顧客に対して個別のアクションを実行するマーケティング手法)を実現したいと考えていました。そこで、自社環境を整備するために MA ツールと DMP を導入したものの、マーケティングチーム内に膨大なデータを適切に扱える人材が居ませんでした。
最初は社内エンジニアに協力を仰ぎながら運用していましたが、膨大なデータを管理・分析するため、当然ながらエンジニアの負荷は徐々に増えていきました。そして、次第にマーケティングチームとエンジニアの関係は悪化してしまい、会社全体の生産性が大きく低下する結果となりました。
スポーツメーカー
とあるスポーツメーカーでは、グローバルにビジネスを展開する中で、日本市場における EC サイトの収益率が課題となっていました。そして、この課題を改善するため、 MA ツールや DMP をはじめとした IT ツールを多数導入しました。
しかし、これらの IT ツールを運用するための工数が膨れ上がり、慢性的なリソース不足に陥ってしまいます。その結果、リソース不足を解消することが困難になり、プロジェクトは途中で頓挫してしまいました。
アパレル企業
とあるアパレル企業では、 EC サイトとリアル店舗で相互送客を行うためのオムニチャネル化に取り組んでいました。オムニチャネルとは、企業と顧客のタッチポイントや販売チャネルなどを統合し、顧客へ面でアプローチするための手法を意味する言葉です。
同社はマーケティング活動の質を高めるために MA ツールを導入しましたが、社内に点在するデータが整理されておらず、 EC サイトやリアル店舗ごとにデータをバラバラに管理していたことが発覚します。
そこで、 MA ツールを活用するためにデータの抽出・統合を試みますが、これらにかかる工数は予想以上に大きなものでした。結果として、 MA ツールを有効活用することはできず、オムニチャネル化のプロジェクトも失敗に終わってしまいました。
データ活用の主な失敗原因
以上の失敗例のように、データ活用に取り組みつつも、なかなか成果が出ない企業も一定数存在します。それでは、データ活用が思うように進まない原因は何でしょうか?
本章では、データ活用の主な失敗原因をいくつかご紹介します。
目的が明確化されていない
データ活用の主な失敗原因として、目的が明確化されていないことが挙げられます。データ活用は「データを活用すること」自体が目的ではなく、目指すべき姿に辿り着くための手段に過ぎません。
また、目的が明確化されていなければ、取り扱うデータの種類を決めることは困難です。自社にとって意味のないデータを分析したところで、価値の高い気付きを得ることは不可能であり、データ分析から先のプロセスに進むことはできません。
データが整備されていない
効果的なデータ活用を実現するためには、分析対象となるデータを整備し、適切に管理する必要があります。データが整備されていない場合、欲しい情報を適切なタイミングで取得することはできません。
結果として、必要な材料が揃わずに満足な分析作業ができず、データ活用も中途半端な状態で止まってしまいます。このように、データが整備されていないこともデータ活用の失敗原因の一つだと言えるでしょう。
IT 人材が不足している
データ分析を行う企業にとっては、 IT 人材の不足が深刻な課題になります。データ活用では膨大なデータを管理・分析するため、一定の IT スキルを有した人材が必要です。
昨今、 IT 人材のニーズは高まっていますが、専門的なスキルを必要とするため慢性的な人手不足に陥っているのが現状です。そのため、 IT 人材を確保することは容易ではなく、人材不足がデータ活用を阻む一因になっていると言えるでしょう。
適切なツールを導入していない
多種多様なデータを適切に活用するためには、多くの時間と工数を要します。 Excel などのソフトウェアでデータ分析を行うことも可能ですが、データ量が膨大な場合は現実的ではありません。
そのため、多くの企業ではデータ活用に役立つ IT ツールを導入していますが、企業の中にはツールを一切導入していない会社も存在します。このような場合、データ活用を効率的に進めることができず、リソース不足などの理由からプロジェクトが途中で頓挫してしまう可能性も十分に考えられます。
データ活用を成功させるためのポイント
本章では、データ活用を成功させるためのポイントをいくつかご紹介します。
データ活用の目的を決める
データ活用を成功させるためには、事前にデータ活用の目的を決める必要があります。自社の目指すべき姿を具体的に描き、ゴールに向けて逆算で考えましょう。
ゴールが決まれば、どのようなデータをどのように活用すべきなのか?が見えてきます。事前のゴール設計でデータ活用の成否が決まると言っても過言ではないため、時間をかけて計画的に進めてください。
自社のデータを適切に管理する
効率的なデータ活用を進めるためには、自社が保有するデータを適切に管理する必要があります。整理した状態でデータを保管し、必要なタイミングですぐに取り出せるように準備しておきましょう。
また、データに対して優先順位を付けることも重要なポイントです。企業が保有するデータ量は膨大であるため、すべてを管理することが難しい場合には、自社に必要不可欠だと思われるデータを優先して管理するように工夫してください。
IT 人材を積極的に採用する
データ活用には IT 人材が欠かせません。膨大なデータを適切に取り扱うためには、一定の IT スキルを有した担当者が必要になります。
IT 人材の採用が難しい場合には、社内で研修プログラムを計画して育成するという選択肢もあります。また、経済的に余裕があれば、外部講師への教育依頼や、外部ベンダーへの作業委託も有効だと言えます。
データ活用に役立つツールを導入する
データ活用を本格的に検討しているのであれば、 IT ツールの導入をおすすめします。膨大なデータを効率的に処理できるツールが多数存在するため、これらを活用することで作業効率を大幅に改善できます。
ただし、データ活用に使えるツールは多岐にわたり、目的や用途に応じて様々な種類が存在します。そのため、複数のツールを比較検討して、自社に最適なものを選択することが重要なポイントになります。
データ活用に役立つツール
最後に、データ活用に役立つツールをご紹介します。ツール導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
DMP
DMP は「 Data Management Platform 」の略であり、インターネット上に存在する様々なデータを管理するためのプラットフォームです。自社に対する問い合わせ内容や顧客の購買履歴など、様々なデータを一元的に管理できます。
DWH
DWH は「 Data Warehouse 」の略であり、膨大なデータを保存・管理するためのツールです。様々なデータを整理した状態で保管し、データ分析などの作業時に必要なデータを即座に取り出すことができます。
ETL
ETL は「 Extract(抽出) 」「 Transform(変換) 」「 Load(書き込み) 」の 3 つの英単語の頭文字を取ったものであり、複数のシステムからデータを抽出・変換し、共有する機能を搭載したツールです。様々なシステムから外部へデータを書き出すことが可能なため、効率的にデータを取り扱うことができます。
ELT
ELT は「 Extract(抽出) 」「 Load(書き込み) 」「 Transform(変換) 」の 3 つの英単語の頭文字を取ったものであり、データベース内のデータを変換処理できるツールです。 ETL と同様に複数システムから外部へデータを書き出すことが可能ですが、データ処理の順番が ETL とは異なっています。
MA
MA は「 Marketing Automation 」の略であり、マーケティングに役立つツールです。顧客データを収集することはもちろん、行動履歴から見込み顧客を育成することも可能であり、ターゲットを絞った効率的なマーケティング活動を行うことができます。
BI
BI は「 Business Intelligence 」の略であり、データを可視化するためのツールです。膨大なデータをグラフや表でわかりやすく可視化してくれるため、その後のデータ分析をスムーズに行うことができます。
セルフサービス BI
セルフサービス BI は、ユーザー自身が主体的に操作可能な BI ツールの一種です。例えば、分析やレポート作成など、自社の状況に合わせて柔軟に扱うことができる点が大きな特徴となっています。
まとめ
本記事では、データ活用の基礎的な内容に加えて、データ活用の主な失敗原因や具体的な失敗例まで一挙に解説しました。
昨今、データ活用の重要性は益々高まっており、数多くの企業がデータを有効活用するために試行錯誤を続けています。しかし、データ活用は容易なことではなく、失敗に終わってしまうケースも珍しくありません。
データ活用の失敗原因は概ね共通しているため、この記事を読み返して重要なポイントを理解しておきましょう。なお、状況次第では外部ベンダーへの作業委託や IT ツールの導入も有効な手段になります。ITツール導入の際はしっかりと目的に合わせて選定するようにしましょう。
また、データ活用を実践するためには、自社が一定量のデータを保有している必要があります。そのため、まずは様々なデータを蓄積し、それらを管理することから始めてください。
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