昨今、データ活用の重要性が高まっており、データを取り扱うためのITツールが大きな注目を集めています。代表的なツールとして、データレイク・データウェアハウス・データマートの3つが挙げられますが、それぞれの違いをご存知でしょうか?
本記事では、データレイク・データウェアハウス・データマートの特徴や違い、構築方法などを一挙にご紹介します。自社でデータ活用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
データレイクとは?
まずは、データレイクについて詳しくご説明します。
概要
データレイクは「データの湖」を意味する名前の通り、膨大なデータを生データのまま格納しておくためのツールです。音声データや動画データ、SNSのログデータなど、多種多様な非構造化データをそのままの形式で保管できます。また、データマートのように明確な目的を持っているわけではなく、データレイクに保存されている情報は「必要になった時のために一応保管しておこう」のように、単純にデータを保管するだけの場所というイメージで使われることが一般的です。
メリット
データレイクの最大のメリットは、様々な種類の非構造化データをそのままの形式で一元的に保管できる点です。これらのデータをAIと組み合わせて利用すれば、複雑なデータ分析を効率的に行うことも可能です。データウェアハウスやデータマートは整理された状態でデータを保管するため、形式を変えずに生データを格納したいのであれば、データレイクが有効なツールになります。
デメリット
形式を問わずに様々なデータを保管できる点がデータレイクのメリットですが、これは裏を返せばデメリットにもなり得ます。データレイクの管理を怠った場合、膨大なデータが散在するだけの無意味なものとなってしまい、欲しいデータを即座に取り出すことは難しいでしょう。そのため、データレイクを適正に活用するための運用ルールを整備することが重要なポイントになります。
活用例
データレイクの活用例としては、ビッグデータの処理が挙げられます。ビッグデータとは、膨大かつ多様な非構造化データを意味する言葉であり、情報技術が急速に進化した現代では、ビッグデータ活用の重要性が強く叫ばれています。通常、ビッグデータを処理するためには多くの時間と手間を要しますが、データレイクは変換作業なしでバッチ処理・ストリーミング処理でビッグデータを移行することが可能なため、大幅な業務効率化に繋がります。
データウェアハウスとは?
次に、データウェアハウスについて詳しくご説明します。
概要
データウェアハウスは膨大なデータを保管しておくためのシステムであり、英語表記の「Data Ware House」を略してDWHと呼ばれることもあります。「データの倉庫」と表現されることが多く、膨大かつ多様なデータを格納するための場所として利用されます。データウェアハウスに保管されたデータは主に分析を行うために活用されるため、既に使っていないアクセスログなどの情報も一元的に格納する点が大きな特徴となっています。
メリット
データウェアハウスのメリットとして、データの収集・分析を効率化できる点が挙げられます。データウェアハウスを活用することで、膨大なデータを効率的に収集し、整理された状態で保管できます。また、データウェアハウスには様々な情報が一元的に保管されているため、必要な情報を必要なタイミングですぐに取り出すことが可能です。
さらに、データウェアハウスはデータを時系列で保管することも可能です。これにより、精度の高いデータ分析が可能になり、あらゆるシーンで迅速な意思決定を実現できます。このように、データウェアハウスには多くのメリットがあり、企業のデータ活用を強くサポートしてくれるツールだといえるでしょう。
デメリット
データウェアハウスには様々な機能が搭載されていますが、高機能であるが故に導入することが目的化してしまうケースも珍しくありません。そのため、データウェアハウスを効果的に活用できるよう、ルール整備なども含めて適切に運用することが大切です。また、データウェアハウスには分析・可視化の機能が搭載されていないことが一般的であるため、これらを行うためにはBIツールなどが必要になる点は覚えておいてください。
活用例
データウェアハウスの活用例としては、分析作業を行うためのデータ整理が挙げられます。まずはデータウェアハウスに膨大なデータを投入し、形式などを考慮しながら整理することで、分析作業に必要となる情報を即座に取り出すことが可能になります。データウェアハウスは時系列でデータを保管できるため、時系列分析も有効な活用シーンの一つだといえるでしょう。
データマートとは?
最後に、データマートについて詳しくご説明します。
概要
データマートは小売店を意味する「mart」という英単語が語源であり、データウェアハウスに保管されているデータの中から、目的に応じたデータを抽出・加工して保管するためのデータ保管システムです。そのため、データウェアハウスの小型版と考えるのがイメージしやすいと思います。
メリット
データマートは、データウェアハウスから必要な情報だけを抽出します。目的と関係のないデータを考慮せずに作業を進められるため、分析作業を効率化できる点はデータマートの大きなメリットだといえるでしょう、また、扱うデータ量を最小限に抑えることができ、リソースの節約や処理速度の高速化にも繋がります。
デメリット
データマートはデータウェアハウスと比較して、格納できるデータ量が少ない傾向にあります。一般的なデータウェアハウスは、数テラバイト以上のデータを格納できることも珍しくありませんが、データマートは多くても数百ギガバイト程度のデータ量にしか対応していません。そのため、扱うデータ量が多い場合には、データマートが不向きなケースも存在します。
活用例
データマートの活用例としては、目的が明確化されている分析作業の効率化が挙げられます。データウェアハウスに保管されているデータの中から、目的に沿った情報のみをデータマートに抽出することで、以降の分析作業を効率化できます。また、データマートに保管されているデータはリソースが最適化されているため、コスト削減に寄与する点も重要なポイントだといえるでしょう。
データレイク・データウェアハウス・データマートの違い
ここまで、データレイク・データウェアハウス・データマートのそれぞれの概要についてご紹介しました。本章では、これらの違いについて様々な観点からご説明します。
データレイク | データウェアハウス | データマート | |
---|---|---|---|
利用目的 | 明確な目的がない | 明確な目的がある | 明確な目的がある |
ユーザー | 不特定多数 | 限定的 | 限定的 |
容量 | 大きい | 大きい | 小さい |
保存データ | 非構造化データ | 構造化データ | 構造化データ |
構築期間 | 短い | 長い | 短い |
利用目的
データウェアハウスとデータマートは明確な目的をもって構築されることが一般的ですが、データレイクは目的が存在せず、単にデータを保管するための場所として位置付けられることが多くなっています。
ユーザー
データウェアハウスとデータマートは利用するユーザーが限定的ですが、データレイクは不特定多数のユーザーが利用するケースが多いです。これは利用目的に違いに起因するものであり、目的が明確化されているデータウェアハウス・データマートは分析プロジェクトに関わるメンバーのみが利用することが一般的ですが、単なるデータの置き場所であるデータレイクは、様々なユーザーがアクセスしてデータを保管するためです。
容量
データウェアハウスとデータレイクは、数テラバイト以上のデータを格納でき、場合によってはペタバイト級のデータを保管することも可能です。一方、データマートは多くても数百ギガバイト程度のデータ量にしか対応しておらず、データウェアハウス・データレイクと比較すると容量は小さくなります。
保存データ
データウェアハウスとデータマートは綺麗に整理された状態のデータを保存するのに対して、データレイクは整理されていないデータをそのままの形式で保管します。このように、構造化データ・非構造化データのどちらを扱うのか、という点においてもツールごとの特徴があります。
構築期間
データウェアハウスは構築期間が長期化する傾向にありますが、データマートとデータレイクは比較的短期間で構築できるケースが一般的です。保管するデータ量という観点では、データレイクもデータウェアハウスと同様に膨大なデータを格納しますが、整理せずにそのままの状態で保存するため、そこまで構築期間が長くなることはありません。
データレイク・データウェアハウス・データマートの構築方法
ここまで、データレイク・データウェアハウス・データマートのそれぞれの概要について詳しくご説明しました。それでは、具体的にどのように構築すれば良いのでしょうか?
前章でご説明した通り、ツールごとに違いはありますが、「データの保管場所」という意味ではすべて同じであるため、一般的に共通している部分の構築プロセスについて解説します。
Step.1 設計
まずは、どのような設計にしたいのかを検討することが最初のステップです。特にデータウェアハウスとデータマートは目的に沿って構築されるものであるため、ゴールから逆算して実際の運用も考慮しながら慎重に検討を進めてください。
この時、どのような種類のデータを保管するのかを明確化しておくと、以降の作業がスムーズに進みます。なお、データレイクの場合は細かい設計までは必要ありませんが、保管する合計データ量を事前に想定しておくことで、容量不足などのトラブルを回避できます。
Step.2 構築
設計が終わったら、次はデータレイク・データウェアハウス・データマートの構築作業に移ります。一般的には、物理的なデータベースの構築とデータベースの論理構造の作成の2点を行う必要があります。
この時、セキュリティ対応や他システムとの連携・統合なども考慮した上で作業を進めることが大切です。また、ユーザーが必要な情報へすぐにアクセスできるよう、ユーザーインターフェースにも気を配ることで、より完成度を高めることができます。
Step.3 データのインポート
次に、保管するデータをインポートします。移行元となるデータソースから取得するデータのマッピングを行い、その内容に沿ってデータを抽出してください。なお、データのマッピングとは、システム間でデータの受け渡しを円滑に行うための作業であり、新旧システム間でのテーブル項目の対応づけなどが代表的なマッピングの作業例になります。
また、データをインポートした後は、そのデータに問題なくアクセスできるかを必ずチェックしてください。データにアクセスできなければ、実業務で活用することは困難であるため、データのインポートとアクセスチェックはセットで行うことが大切です。
Step.4 データの管理
データのインポートが完了した後は、それらのデータを安全かつ適正に管理します。
例えば、
- 安全なアクセスの確保
- 情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策
- データ増大に備えたスケーラビリティの確保
- 要件変化に対応するためのシステム最適化
- 障害発生時の冗長性・可用性の確保
など、様々な観点からデータの管理・運用に関するルールなどを整備し、業務に有効活用するための体制を整えてください。
Step.5 定期的なメンテナンス
ここまで、データレイク・データウェアハウス・データマートの構築方法をご説明しましたが、上記のStep.1からStep.4までのプロセスは継続的な見直しが求められます。なぜなら、扱うデータは常に変化しており、ビジネス市場の状況や自社におけるデータ活用の目的も日々変化するためです。
そのため、定期的なメンテナンスを行い、現状と照らし合わせて問題はないか、より効率的に活用できる方法はないかなど、PDCAサイクルを継続的に回して、運用改善を日々意識することが重要なポイントになります。
まとめ
昨今、デジタル技術の急速な進化に伴い、データ活用の重要性は益々高まっています。これに伴い、データを保管するためのデータレイク・データウェアハウス・データマートは必要不可欠な存在であるといえるでしょう。
ただし、これらは「データの保管場所」という意味では共通していますが、厳密には様々な違いがあります。この記事を読み返して、それぞれの特徴や違いなどを理解しておいてください。
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本記事を参考にして、データレイク・データウェアハウス・データマートの活用を検討してみてはいかがでしょうか?